« ナターシャ・グジーさん | トップページ | 山口仲美、『若者言葉に耳をすませば』 »

マーク・ピーターセン、『日本人が誤解する英語』

マーク・ピーターセン、『日本人が誤解する英語』 (知恵の森文庫、光文社、2010/8/10)

本書は『マーク・ピーターセン英語塾』(集英社インターナショナル/2004年)を  加筆修正し、改題して文庫化したもの。

私は、 マーク・ピーターセン氏の『日本人の英語』に多大なる影響を受け、自分の授業に積極的に取り入れている。彼の著作を読まなかったら、私の授業は成り立たなかったかもしれない。

彼には、いかに冠詞が大切か、日本語と英語の時制はいかに違うかということも教えてもらった。英語のネイティヴスピーカーは、冠詞を名詞の前に置くという意識はもっておらず、冠詞を言ったあとに、その後に続ける名詞を考えるという発想をしているという、あまりに当たり前だが、日本人の英語学習者が意識していない事実を教えてもらったのも、この本である。

No more Gunというキャッチフレーズをよく見かけるが、これについてマークさんは、日本人は英語として認識しているが、英語圏の人間には英語とは思えないものであると述べている。

ゲームカセットを欲しがる子どもに、親がNo mo games!というなら、「もうこれ以上ゲームカセットは買ってやりません」という意味になる。

つまり、No moreということは、「これ以上多くはいらない」という意味で、銃を完全になくそうという趣旨にかなっていない。

さらにGunを抽象名詞のように扱い、数えないということも理解ができない。

ことほど左様に、No more Gunは不条理な英語なのである。

同様に英語になっていないのは、No more Hiroshimaである。

この場合は、Hiroshimaを複数形にし、Hiroshimasにすれば、「広島のような悲劇を繰り返さない」という意味になる。

日本人は、単語さえ並べれば、英語として通じると思ってはばからない。しかし、英語では、名詞を数えたり、数えなかったり、または限定詞のtheをつけることで、6つの意味を生み出し、それらを区別する。こういうベーシックなルールを無視したまま、文法なんか関係ない、などと平気な顔をしている日本人の英語学習者がいかに傲慢であるかということをマーク・ピーターセン氏は幼稚で傲慢な日本人に噛んで含めるように教えてくれるのだ。

時間の扱い方も、日本語と英語とでは大きく違う。電車の運行時刻にはうるさい日本人は、こと英語となると、時間に大雑把になってしまうのも、非常に悪い癖だ。詳細は省くが、過去形と現在完了形の違いを示すために、マーク・ピーターセン氏は次のような例を出す。

ある男性が、ある女性に対して、思いを抱いているとする。その状況を知った彼の友人が、勇気を出して彼女を誘いだしたかどうか聞き出す場合、二つの表現が想定される。

ひとつは過去形でもうひとつは現在完了形である。

1. Did you manage to get up the courage to ask her out?

2. Have you managed to get up the courage to ask her out?

過去時制は「すでに終わったこと」を指し、現在時制は「いまもそれが当てはまる」場合に使われる。

この基本を踏まえ、「彼女のことを諦めた場合」と「彼女のことを諦めていない場合」を考える。

「彼女のことを諦めた場合」に、Have you managed 〜?と訊くと、もうせっかく諦めているのに、諦めるんじゃないよ、と余計なプレッシャーを与えてしまうことになる。一方、Did you manage〜? と過去形で聞けば、もう諦めても仕方が無いよね、と訊かれた方も安心するだろう。

では、「彼女のことを諦めていない場合」はどうか。現在完了形で訊けば、「勇気が出せなくても、まだ諦める必要はない」というニュアンスが含まれる。一方、過去形で訊けば、「所詮無理なんだよ」とか「もう諦めているんだろう」というニュアンスになってしまう。

こういう違いを理解せず、いい加減な日本語訳をして満足している人が、教師にも学生にもいまだに多い。

英会話の教材を買う前に、ぜひとも、彼の本を一冊読んでおいてもらいたい。


マーク・ピーターセン 「日本人の英語」 22年後の再ヒット!:BizEnglishJPキャリアアップ塾

 明治大学政治経済学部教授 マーク・ピーターセン 著の岩波新書 「日本人の英語」 が発刊から22年後の今、再びヒットして売上部数が70万部を突破し、百万部に達する勢いと新聞報道されています。

これはわたしだけの考えではありませんが、これまで、教える側の学校の先生の英語知識が、日本の英語学者などが知っているまたは理解している範囲内で定義された英文法解釈に基づいていたため、生徒や学生が正しく英語を教えられなかったのではないでしょうか。近年になってようやくそれが教育関係者の間でも認識され、教え方が改善されているようです。

下線部は、私がつけたもの。この方の意見にまったく同感だ。

先日もある学生に、何かおすすめの英文法の問題集はないですかと尋ねられた。私のアドバイスとしては、文法の問題集はやらないほうがいいし、受験用の文法書も読まないほうがいいと答えておいた。ひとつ足りなかったのは、マーク・ピーターセン氏の『日本人の英語』(岩波書店)を推奨することだった。いまからでも間に合うから、今週、学生たちにおすすめしておこう。

« ナターシャ・グジーさん | トップページ | 山口仲美、『若者言葉に耳をすませば』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

フォト

Daily Moon Phases

モーションウィジェット


gogo.gs

日めくりカレンダー

無料ブログはココログ